青山学院大学の文学部入試の現代文(評論)は近年の現代文で頻出の舟木亨(専修大学文学部哲学科教授)の著書からの出題となりました。
またテーマも入試頻出のテーマである科学技術のうち、近年飛躍的に伸びているAIについての論述です。
AIについては今年の入試でも取り上げられる可能性がありますので、ここで一回読んで慣れておくことも良い準備になると思います。
かつては科学技術の発展によって便利になり、人間の不安が取り除かれると考えられていましたが、人工知能(AI)には「不安」という概念がありません。
インプットされたデータに対し最適な解を導き出して提示するだけで、これが感情を持つ人間と最も異なる部分です。
このページでは本文全体の趣旨が理解できているかを聞いている問十を練習問題として解いてみたいと思います。
現代文の読解方法については次のページをご覧ください。
現代文の読解に必要な3ステップを解説しています。
◆受験国語勉強法 現代文の読み方と解き方 - 受験国語現代文の解き方:ライオンの勉強法
青山学院大学 文学部 国語 過去問 大問1 読解
まずテーマを探しましょう。
本文ではAIについて述べられていますので、テーマはAIとなります。
ただし筆者は科学技術全般の話をしていて、ここではその代表としてAIを取り上げていますので、大きなくくりではテーマを科学技術としても構いません。
次に本文の二項対立を検討します。
万博の例などが出され、「未来はこうなる」と展示されていたものが本当以上に実現していったのに、それでも筆者は現在私たちは「不安な時代を生きている」と読者に投げかけています。
問題文の二項対立は「AI(科学技術)によって未来が良くなる」 VS 「AI(科学技術)では未来が良くならない」です。
そして筆者がどちら側なのかというと、AIは現在までのデータからその延長としての未来を提示するだけで、これは課題解決であって、人間が考えるような未来ではないため、「AIが人類を未来の消失から救ってくれそうにない」とありますので、筆者は「AI(科学技術)では未来が良くならない」派です。
青山学院大学 文学部 国語 過去問 大問1 問十
上記を踏まえて、問十の選択肢を見てみましょう。
傍線部6は「それに加担する装置」とあり、「それ」の指すものは「未来の消失」です。
AIは人類の未来の消失に加担する装置であると言っているのです。
指示語がわかればそれだけですぐに解答できてしまう簡単な問題なのですが、これは筆者の主張=テーマに関する二項対立で筆者がついている方をそのまま聞いている問題です。
実は選択肢の①④⑤はすべてAIの持つ要素として本文中に述べられています。
そのため、本文に合致しているかどうかで選んでしまうと間違ってしまう可能性があります。
しかし④と⑤はいずれも「AIに任せた方が安心だ」という考えの具体例として提示されているものです。
傍線部6は筆者が自らの主張を述べている箇所に引かれていますので、④と⑤は正解にはなり得ません。
この意味でも①しか正解は無いと言えるでしょう。
このように、しっかりと読解の3ステップを踏まえずに問題だけを見て解いていってしまうと、引っ掛けに引っ掛かってしまうことがあります。
現代文の読解の際には、それぞれの部分が二項対立のどちら側について書かれているのかを意識して読み、それと照らし合わせながら問題を解くようにしてください。